組織開発室向けにパルスサーベイの可視化支援を行いました

組織開発室向けにパルスサーベイの可視化支援を行いました

Clock Icon2023.12.18

データアナリティクス事業本部の武田です。

9月ー10月の約2ヶ月間、社内の組織開発室向けにパルスサーベイの可視化支援を行いました。今日は、その流れをご説明します。

パルスサーベイとは?

クラスメソッドでは、会社が社員の簡単な質問を毎月アンケート方式でおこなっています。アンケートは、自分の所属するチームや組織をどう感じているかを知り、組織の改善に繋げることを目的としています。

アンケートは1〜5の数字で答えるだけで、フリー入力はありません。毎月同じ12個の質問で、自分が今どう感じているかを答えます。

アンケートは匿名で、個人特定不可能な状態で実施されています。その上で、所属チーム単位の集計を実施しており、少人数のチームで回答に偏りがあった場合、その偏りに対してあらぬ憶測が生まれる可能性があります。そういった憶測が広がらないように全社には全社単位の集計を提供し、小規模部門やチーム単位の集計についてはマネージャー層に限定して共有しています。

つまり、部署を細かく検索条件が指定できる機能は、特定の役割の人(リーダーやマネージャー以上の役割の人)に限定する必要があります。

可視化支援に至った背景

支援開始時に、組織開発室より下記のような内容の説明をいただきました。

    分析レポートの見せ方の改善をしたい
    部門平均と全社平均との比較を可視化したい
    システム移行する(データ出力のレイアウトが変わる)ので相談したい

システム移行するタイミングが控えていましたので、データ連携加工部分の運用負担を考慮しつつ、可視化も改善したいというご要望でした。

システム移行によってデータ出力レイアウトが変わり、今までは「縦持ち」だったものが「横持ち」になるという変更がありました。

「縦持ち」というのは下記のようなイメージです。アンケート質問が増えると縦に行が増えていきます。

「横持ち」というのは下記のようなイメージです。アンケート質問が増えると横に列が増えてきます。

エクセルで人間が見る分には、「横持ち」のほうがわかりやすく見えることが多いのですが、 データベースで取り扱う場合は、「縦持ち」のほうが扱いやすいデータの持ち方になります。

Looker Studioに限らず、一般的なBIツールは「縦持ち」データを前提とした作りになっています。「横持ち」は雑然データと呼ばれていて、BIツールにとりこんだ場合、作成できないグラフ表現が出てきます。

よって、「縦持ち」に合わせる方がよく、システム移行した後は、出力したデータを縦持ちに変換した上でLooker Studioに取り込むことになります。 この変換部分の運用については、後ほど説明します。

全体の流れ

可視化支援を受けた場合、通常は下記の順番で進めています。

(今回のパルスサーベイの場合、やりたいことは明確になっており、課題は整理された状態でしたので、可視化に特化した支援です。課題整理支援の場合と少しステップが違います。)

ステップ1:要件ヒアリング

ステップ2:役割別に何が見たいかを整理する(シナリオ整理)

ステップ3:データ加工

ステップ4:可視化する

ステップ5:データ連携の半自動化・本番切替フォロー

要件を確認し、「見せ方の改善」と「システム移行による運用負荷をできるかぎり軽くする」ことにフォーカスしました。 出力データの形も明確で、本番に近い形のダミーサンプルデータが用意されていたため、すぐにBIチームが手を動かして進めることができました。

スケジュール

やりたいことが明確で、データの準備も完璧にできていた状態でしたので、約2ヶ月で4回の打ち合わせで終わらせることができました。

(通常は、やりたいことの整理・データの準備・フィードバックの調整等に、もう少し時間がかかります)

参加メンバー

組織開発室 2名

BIチーム リーダー1名 エンジニア1名

ステップ1:ゴール確認

パルスサーベイのダッシュボードは、自分の所属するチームや組織をどう感じているかを知り、組織の改善に繋げることを目的としています。 これが今回作成するダッシュボードのゴールです。

組織の改善につなげるアクションを考えて実行していくのは、主にリーダーやマネージャー以上の役割の方になります。

部署を細かく検索条件が指定できる機能は、リーダーやマネージャー以上の役割の人に限定した上で、改善したい見せ方はどのページのどのグラフなのかを確認しました。

また、システム移行の予定が確定していたので、「システム移行による運用負荷をできるかぎり軽くする」ということも意識した上で、どういう作りにしておけばいいかを検討しました。

ステップ2:役割別に何が見たいかを整理する(シナリオ整理)

今回のパルスサーベイの場合は、同じデータでも、役割によって見せていい範囲が異なるため、役割別に何が見たいかを整理しました。

この整理をして、ダッシュボードは役割別に3つに分けて作ることになりました。

ステップ3:データ加工

今回の場合、加工工程が二つあります。

    システム移行後、出力レイアウトが「横持ち」になってしまうので、「縦持ち」に変換する
    部署名が「/」で連結された長い文字列で1つのセルに入ってしまうので、「事業部・部・チーム」という階層に分ける

この加工内容は、一般的によくある加工内容です。 ネット検索するとスクリプトの作り方が載っていますし、chatGPTに書いてもらってもいいかもしれません。

それを参考に「ボタンをクリックすると変換後フォーマットが出力される」というスクリプトを用意しようとしていたのですが、 組織開発室で先に用意されていたので、お任せしました。

ステップ4:可視化

ステップ2で書いたシナリオに必要なデータを可視化していきました。

ここで一番悩ましかったのは、Looker Studioでデータのばらつき具合を表現する方法です。

現行ダッシュボードでは、標準偏差の数字そのものを棒グラフで表現していました。 しかし、棒グラフでは「ばらつき」のイメージが伝わりにくいため、他のグラフ表現を探しました。 一般的に、「ばらつき」を表現する場合は、散布図や箱ひげ図を使います。

しかし、Looker Studioの散布図ではシナリオに沿った可視化ができず、箱ひげ図は事前集計をしないと表現できない仕様でした。 事前集計をするには、データベースを構えるか、集計工程をスクリプト化することになりますが、今回は時間も工数も余裕がありません。

アンケート回答は1〜5の数字で答えるだけなので、そのばらつきを見たいのなら、回答の構成比を見せればいいと判断し、100%積み上げ棒グラフで表現することにしました。

下記は、リーダーやマネージャー以上の役割の方向けのダッシュボードイメージです。データは全てダミーです。

左側の全体把握では、自分の部署を指定して、質問ごとの傾向・自部門の他チームとの比較ができるようになっています。 右側の詳細確認では、自分の部署と全社平均を比較できます。

真ん中の折れ線グラフは、下記の小技を使っています。(軸が固定できるので使える技です。)

ステップ5:データ連携&本番切替フォロー

Looker Studioを使うことは決まっていたため、どうLooker Studioにデータ連携すると運用が楽かということを考慮しました。

Looker Studioは、GoogleのCloud Storageと連携すると、バケット内の全ファイルを読み込むことができます。 毎月1ファイルを出力して追加すればいいので、Cloud Storageの連携に決めました。 (スプレッドシートの場合は、「全てのシート」という読み込みができません。)

本番切替作業は、データの特性上、組織開発室の方にやっていただく必要がありました。

本番切替時にはデータソースの切り替えがありましたので、作業の流れを理解して頂くために、データがどこから入ってきて、どのダッシュボードにどう繋がっているのかを説明しました。

そこで、図でどのデータをどこが見ているのかをまとめたり、データソース切替の手順と注意事項等をまとめたりしました。

(上記で進めようとしましたが、本番データで切り替えた際に、統合で想定外の動きをしてしまうことが判明しましたので、実際には、統合は使わず、Googleスプレッドシートを参照するように切り替えて運用しています。)

組織開発室より一言

レポートのUIとしてのHowだけではなく、

    * ユーザーにとって何が必要か?
    * そのためにどんな見せ方が必要か?

というWhyやWhatまで踏まえて進めていただけたのが、初回の打合せ時に特に嬉しく思った点でした。 全体的な進行もナビゲートしていただき、組織開発室としては最小限の手間で分析レポートの改善を実施いただけました。

ツールの機能制約も含め、要件を満たすために必要なことをスピーディーに実現していただきました。 おそらく自分たちだけで進めていたら実現できないこと、実現にかなりの時間を要したことばかりでしょう。

改めてパルスサーベイの可視化支援いただき、感謝です。 新しいレポートを活用し、マネージャー陣と協力して組織改善に活用していきます!

マネジャー・リーダーより一言(ダッシュボードのユーザー)

ダッシュボードが、分析すべきポイントを明確に示しているため、分析のプロセスにおける「気づき」までスピードが速くなりました。 それによって次のアクションへの洞察を得ることができ、意思決定に大いに役立っています。 加えて、実施済みの施策の効果も確認できるので、ふりかえり評価するのにも助かっています。

全体的にUIや見せ方が、過去からの推移、という点で整理されているのがすごくみやすいです。もともと、絶対的な数字をみるだけだとあまり得るものがなかったり「ふーん」となりがちな感じだったのが、そのあたりがわかりやすくメインに入っているのが、素晴らしいなと思いました。

トレンドが大きくなってとても見やすくなりました。あの出来事がこのように影響しているのかなという仮説も立てやすくなったと思います。 また質問別では結果が帯グラフになったことでチームごとの傾向が見えて、自分がそのチームに対して感じていた課題感と実際のメンバーの感じている課題感の違いをイメージしやすくなりました。

全体的に見やすくなった印象です 「<部署比較>質問別トレンド(青の比較部署=デフォルト全社比較)」で質問ごとのスコアの推移が見やすくなりました 以前はグラフが小さくて具体的な数値が見えづらかったはず。

BIチームより一言

全社員向けダッシュボードを見ながら「気になるなぁ」と思っていたので、今回改善をやらせていただいて、とても嬉しかったです。 組織改善ポイントが見つけやすくなって、改善されていけば、一社員としても嬉しい限りです。

今回の支援では、組織開発室の中でやりたいことの整理やデータ準備がしっかり準備され、BIチームがすぐに手を動かせる状況になっていて、非常に助かりました。

行列変換スクリプトまで用意されていたので、「組織開発室は組織開発プロなのに、自分でスクリプトも書いちゃうの?」と思いました。システムの会社だからなのか、「自分のことだから自分でやる」という意識がしっかり根付いているからなのか、その両方なのかもしれません。ご一緒させて戴いて、大変良い刺激を受けました。

本番切替作業では、Looker Studioで思わぬ現象が出てしまい、想定以上の負荷をかけてしまった点、申し訳なかったです。今後のダッシュボード改善の際に見直ししたいと思っています。

大変短い間でしたが、とてもやりとりがスムーズで、可視化に集中させていただき、楽しく仕事を進めることができました。ありがとうございました。 本番切替後に改善事項があれば、お声がけいただければと思います。

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